こんにちは、ふみ丸です!
『WHITE ALBUM2』といえば一部界隈で絶大な人気を誇った作品ですよね!著名人含め色んな隠れファンがいるという噂も…
ただ一般的な知名度は皆無といっていいほどで、ファンとしては悔しい気持ちでいっぱいです。
今回は本ブログの初回記事ということで、
この作品はなぜこんなにも面白いのか
ということを色々考えてみました。
途中からネタバレも含まれてくると思いますが、直前に注意もいれますので未プレイでネタバレ気になる方はそこでそっと閉じていただけたらと思います!
ただ意外とネタバレを読んだからこそもっとその作品に興味が湧くってこともありますよね。なのでもしネタバレ気にならない方は未プレイでもぜひ最後まで読んでみてください!
- 作者が圧倒的実力の持ち主だから
- ここぞというセリフがセンスの塊だから
- 憎たらしいほどユーザーを驚かせる演出に溢れているから
- 物語の構造全体に芸術的な美しさがあるから
目次
これは「実力者だから面白い作品」のか「面白い作品を書いてるから実力者」なのか。色々言葉の定義で議論のありそうなところですが、それは一旦置いておいて…
とにかくヒット作を多数出してるすげー人が数年かけて本気で書いたシナリオだからこそ、当然面白くなるよね!っていう話です。
もう少し詳細に言うと、メインのライターである丸戸史明さんは『この青空に約束を』や『パルフェ 〜Chocolat second brew〜』などの名作ゲームから、『冴えない彼女の育て方』といったアニメまで多数のヒット作を生んだクリエイターです。
そんな実力者の彼が、自分自身が大ファンだったという『WHITE ALBUM(無印)』の続編を、5年の期間心血注ぎ込んでやっと作り上げた作品が『WHITE ALBUM2』なわけです。
それだけでも「やばそう…」って思いませんか?
丸戸さん自身も、「想定していた評価の幅の中で一番良い高い所に行ってくれた作品」と明言しており、自身も満足いく評価だったみたいです。
そりゃ美少女ゲームの中でも評価平均値が歴代ランキング2位ですから、もはや歴史に残った名作といっても良いかもしれません。
※数値の見方には議論の余地あり
これはプレイ済みの方はよーくわかってるかもしれませんが、物語のキーになる場面でのセリフがほんっとにエモいですよね…
※以下ネタバレを含みます
ic(高校生編)終盤の卒業式の夜、かずさと春希が電話片手に公園で
「電話なら、言えることってあるよな。 声だけなら、伝えられる気持ちって、あるよな」
と言いながら再会するシーン。
お互い好きで、でもお互い雪菜を裏切っちゃダメというのはわかっていて…だからこそ電話越しなら大丈夫だと心に言い訳したのに、結局会ってしまった。
そんな後ろめたさと喜びが混ざり合って出たセリフ…かずさの複雑な心情が本当にうまく表現されたセリフだと思います。
本当に好きなシーン、好きなセリフで溢れてるので、いいシーンを挙げろと言われたらキリがないのですが、他にセリフが印象的なシーンでいうと
「話があるんだ。どうしても言わなくちゃならない、大事な…」
という、春希が大学時代から数年間連れ添った雪菜に別れを告げるシーンですね。
常識的に考えたらありえない選択肢を、大きな決意を持って話す。その後ろめたさと決意を、この倒置法のセリフがうまく醸し出しています。
本当に一部のみの紹介ですが、「ここぞ」というシーンで、そのシーンやキャラの心情を見事に表すような台詞回しが本当に多くて、何度プレイしても感動してしまいます。
マジでWHITE ALBUM2の名シーンについては三日三晩語り明かせる自信があるので、作品愛が有り余る方はぜひご連絡ください笑
プレイ済みの方は、何度も「なんてこった!!」と叫ぶシーンがあったんじゃないでしょうか。それこそ作者丸戸さんの演出にまんまと踊らされてる証拠かもしれません。
とにかくにこの作品は、演出へのこだわりがすごい。
ストーリー展開としても勿論面白いけれど、その展開の面白さを最大限に活かす方法でユーザーを楽しませてくれますよね!
やはり一番衝撃的なのはストラスブールでのcoda開始演出じゃないでしょうか。
雪菜と色々なしがらみを超えてやっと結ばれたというのに!これからプロポーズするつもりだったというのに!!なんでこんな異国で出会ってしまうのか!!!
思わずそう叫んでしまうような衝撃的な展開、そしてその衝撃を最大限に活かす演出
直前のテキストからにおってくる何となく嫌な予感、ふと呼びかけられる声、そしてまるで春希の視線を再現するかのように下からせり上がってくるカメラワーク、そして突如流れるOP映像…
全てが計算しつくされた、最高のエンターテイメントと言っても過言ではない演出じゃないでしょうか。
演出という観点でいうと、ノベルゲームならではの粋な演出も有りましたよね。
cc(大学生編)で、かずさの母、冬馬曜子のカウントダウンコンサートに行くかどうか悩むシーン。プレイ済みの皆さんはご存知、「絶対に選べない選択肢」です!
ストーリー的には、ここでコンサートに行っていたら、隣にはかずさがいて、運命の(仕組まれた?)再会を果たすはずだった…
「もしここでコンサートに行っていたら、全く違う道が生まれたかもしれない」
そう思わざるを得ない、でもそんな道は絶対になかったと言わんばかり演出。
ユーザー的には、行っていた未来が見たいからこそ、どうしても選べないこの選択肢に悶える、なんとも憎らしい、けれどここで会えないからこそストーリーが面白くなることを考えるとどこかエモい演出になってたのかなと思います。
この作品はマクロな視点で見てもめちゃめちゃキレイな作品構造してるんですよね!
まずは雪菜との出会いのシーン。これシーンとしても普通にキレイで印象的な演出がなされてますが、俯瞰してみると実は物語全体の構造を表した構造になってます。
そもそもこの『WHITE ALBUM2』全体、特にicだけで言えば、実は両思いだった春希とかずさの間に雪菜が入り込んでくることによって色々なことが起こるお話ですよね。
それを踏まえてこの出会いのシーンを思い返すと、気持ちよくセッションをしていた春希とかずさの間に雪菜の歌が割り込んでくるシーンになってますよね?つまりこのワンシーンに、物語全体の構造が投影されてるんですよね
これってすごくないですか…?ストーリーとして面白いだけでない、シーンとして美しいだけでない、物語の構造としてとんでもなく整っているという…
そして個人的に感動した構造がもう一つ。それは「ストラスブール」という舞台設定です!
ストラスブールという街、もともと知っていたという方は少ないのではないでしょうか?実はこの街はフランスとドイツの歴史の中でかなり重要な街になっています。
というのは、ストラスブールを中心とするアルザス・ロレーヌ地方はフランスとドイツのまさに国境にあるという位置関係から、過去の歴史の中で取ったり取られたりしている因縁の土地になってます。
あれ、二者から取ったり取られたりしている因縁の土地…
そう、これを春希、雪菜、かずさに当てはめるとぴったり位置関係と人間関係が一致するんですよ!
しかも!このストラスブールという土地は、今述べたような歴史的背景から、今でも街の中でフランス語、ドイツ語両方とも使われています。
それを踏まえて作品の中の音声を聞いてみると、なんと
- 雪菜とその周りはフランス語
- かずさとその周りはドイツ語
と言語の使い分けもされているという…
表層のストーリーだけでなく、俯瞰してみた時にここまで美しく整っている物語は他にあっただろうか…これよりすごい作り込みをしているという作品があればぜひ教えていただきたいです!
さて熱くなりすぎてしまいましたが、こんな感じで第1回の記事を終わりにしたいと思います。
この『WHITE ALBUM2』という作品は、
- セリフというミクロな視点
- 物語の全体構造といったマクロな視点
- ストーリーや演出といった一般的なユーザー視点
どんな確度からみてもクオリティの高い、芸術的な作品と断言できます!
分かる人に、伝われ…!